8月12日日、晴、31度
huluでやっていたので今更ながらLa La Landを見た。面白かった。オープニングからやられたね。イライラ感満載の渋滞のハイウェイを、カーラジオから流れてくる音楽によって一挙に祝祭空間に転換させる。例のキャッチーなテーマソングと質感のある映像がマッチして楽しい。このすぐれた発想に魅了されて、いきなり心をわしづかみにされてしまった。ワンクリックで次の映画が見れるhuluの中にあって、エンディングまで見たいと思った数少ない映画のひとつになった。
ミュージカルということで、本当は気が進まなかった映画だ。ミュージカルにはミュージカルの作法があるということはわかっているのだが、誇張された表現にどうしても気持ちがついてゆかない。だけどこの映画は何も違和感もなくすんなりと世界に入って行けた。このあたりの自然な感じも好感のもてたところだ。星空に浮かんで二人で踊るシーンなんかはちょつとツーマッチかなと思ったが、ミュージカルの枠組みからすればぜんぜんオッケー。他にやりすぎかなと思ったところは、もうひとつの選択肢としてあったかもしれない人生を映像で逐一たどって見せたこと。そこまでしなくても、クライマックスのシーンが成功する工夫がなにかできた気がする。
若い時の恋。それぞれが自分の夢を追いかけている。二人はとても楽しくて幸せだ。ただ、そんなことは当たり前だと思っていて、自分にはもっと大きな可能性に満ちた未来が待っていると信じている。あとから振り返ってみなければ、二人の愛がどんなにかけがえのないものなのか気づけない。若い二人は当然のごとくそれぞれ自分の可能性を求めて歩んでゆく。そしていつの間にか歩んでゆく方向が異なってゆく。
二人とも夢をかなえたのは映画的な演出だけど、現実はそうはうまくいかない。二人とも思うような生き方なんてぜんぜんできていないはずだ。でもね映画のように目と目を合わせて「うん」と現実を受け入れるんだ。二人とももう十分大人だから。あのときの二人がどんなに素晴らしくても、今の自分たちそれぞれの生き方を認めよう。そう決意した気持ちが切なくて、涙が出たよ。ここ数年見た映画のうちで、一番の傑作だと思った。最も一度見ただけだから間違って解釈したところや見落としたところもたくさんあると思う。何度でも見直したい映画だ。
この蜘蛛は 山頭火のと 同じ蜘蛛
【今日の一句】行乞の旅を続ける山頭火がかぶる破れ笠に住み着いた小さな蜘蛛。ときおりツーと糸を伸ばして、目の前を降りてくる。孤独な行脚の良き相棒だ。自分の部屋にも小さな蜘蛛がいつしか住み着いた。蠅捕蜘蛛という種類だろうか。ピョンピョンはねて、手で追い詰めるとツーと糸をたらして飛び降りる。なんて愛らしいんだろう。お前も俺の良き相棒だよ。(説明しなければぜんぜん他人に伝わらない駄作。想いが表現しきれていない)